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名古屋地方裁判所 昭和47年(ワ)1641号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔判決理由〕そこで、原告主張の後遺障害(ハ)「前額部に長さ約2.2センチメートル、最大幅0.5センチメートルの瑕疵」が自動車損害賠償保障法施行令別表第一二級の一四「女子の外貌に醜状を残するもの」に該当する後遺障害であるか否かについて検討する。

(一) 同法施行令別表には第一級から第一四級まで一四等級一二九種の後遺障害が定められているが、この障害認定基準について法令上規定されているものは、同別表備考1、ないし6、があるにすぎず、「女子の外貌に醜状を残すもの」とはどの程度のものをさすかについては、何ら法令上の規定は存しない。

しかし、同施行令が、昭和四二年政令第二〇三号により改正(同年八月一日から施行)され、同別表が労働者災害補償保険法施行規則、労働基準法施行規則、国家公務員災害補償法等の災害補償関係法の別表と同一のものとなり、しかも二個以上障害のあるときの併合繰上げの方法(同施行令二条二号ロないしヘ)および障害等級表上に規定されていない障害の取扱い(同別表備考6)についても右と同一の規定が設けられた経緯を考慮するならば、自賠法と右労災保険法等がそれぞれ法律の目的を異にし、また補償の対象および内容において相違するところがあるにしても、なお後者の障害等級について確立されてきた身体障害等級認定基準が前者のそれに妥当するものと解すべきである。

労災保険における身体障害等級認定基準については労働省において従来の行政解釈例を整理して作成した労働省労働基準局監修の「労災補償障害認定必携」(財団法人労働福祉共済会発行)による解釈運用が行われており、自賠責保険においてもこの障害認定必携に準拠した「自動車損害賠償責任保険、後遺障害認定実務手引き」(自動車保険料率算定会作成)により、同算定会の統轄する全国七六の自動車損害賠償責任保険共同査定事務所において各保険会社からの依頼による後遺障害認定実務を行つているのである(この事実は当裁判所に顕著な事実である)。

もとより、右認定必携等に記載された身体障害等級認定基準は所轄行政庁における行政解釈基準であつて、同別表についての裁判所の判断を当然に拘束するものではないことはいうまでもない。しかしながら自賠責保険制度は保険加入が自動車運行の要件であることから強制保険とされ、保険料率の算定に関し営利性を否定され、また政府が六割の再保険をしている等他の保険とは異る特色を有するものであるが、それが本質的に損害保険制度である以上、同種の事故に遭遇することあるべき多数人より、事故発生の偶然率によつて算出された少額の保険料を集積し、これを保険金の総額として運用されるべきものであるから、保険事故(危険)の範囲が可能なかぎり特定から定型化されていることが保険制度運営の基本となるものであつて、これによつてはじめて右保険事故に対応した保険料率の算定が可能となるものであり、さらに同一の保険事故に対しては同一の取扱いがなされるべきものである(保険契約者平等待遇の原則)。このようにみてくると自賠責保険において前叙別表が規定された趣旨は、それ以前から同一の別表を定める労災保険等の解釈基準をそのまま援用し、これを保険事故測定の基準としたものと解するのが相当であり、裁判所において別表に定める後遺障害等級の解釈を行うにあたつては、前叙労災補償障害認定必携ないしはこれに準拠した後遺障害認定実務手引書による認定基準を逸脱しないよう留意しなければならないのである。

(二) ところで、<証拠>によれば、労災保険において、同別表第一二級の一四「女子の外貌に醜状を残すもの」について、次のとおりの認定基準が示されている。

外貌における「単なる醜状」とは、原則として次の範囲のものをいう。

(1) 頸部にあつては鶏卵大面以上の瘢痕。

(2) 額面部にあつては、一〇円銅貨大以上の瘢痕又は三センチメートル以上の線状痕。

(3) 頭部にあつては、鶏卵大面以上の瘢痕。

右認定基準によれば、原告の前叙瘢痕は右認定基準に達しないものと解さなければならない。

もとより、右認定基準に明示されているように、線状痕の長さ、瘢痕の大きさは醜状障害認定上の原則的な基準であつて、線状痕等の沈着色素の濃淡、凹凸、部位、醜状形態等を総合勘案して妥当な等級判定をすることができるのであるが、成立に争いのない甲第二号証の三、第五証の一、二によつて認められる原告の瘢痕の沈着色素の濃淡、凹凸、部位、醜状形態等を考慮し、なお原告が昭和一五年一一月二四日出生の未婚の女子で、事故当時二九歳であつた事情を斟酌しても、原告の右瘢痕が前示「単なる醜状」に該当するものとは認め難い。

(川端浩)

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